同愛記念病院アレルギー呼吸器科のブログ

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インフルエンザ

寒い日が続きますね。みなさま如何お過ごしでしょうか。
ご多分に漏れず当科でも多数のインフルエンザの患者さんが受診されています。最近の患者さんの傾向としては、①必ずしも高熱が出ていない(しばしば平熱のことがある)、②罹患に伴い併存するぜんそくが悪化する患者さんとそうでない患者さんがいる、③罹らない患者さんは毎年罹らず、罹る患者さんは毎年のように罹患するという特徴があります。今回はこれらについて考えてみたいと思います。

 


①に関しては、いくつかの可能性があります。最も一般的なのはワクチン接種者が不顕性感染すると発熱しにくいことでしょう。これは一見健常者に見える感染者が隔離されることなくシャバにいるというかなりの問題な状況をもたらします。ホラー映画のように感染者の顔色が青もしくは紫に変色(笑)すればわかりやすいのですが…。
②に関しては少し調べてみますと多少の根拠になりそうな報告や知見があります。2009年にパンデミックを起こした新型インフルエンザは感染後のウイルス増殖部位が咽頭喉頭のような上気道ではなく下気道であったため、感染した多くのぜんそく患者がぜんそく発作を起こしました。これに対して従来型のウイルスは上気道で増えるのでぜんそく発作は誘発しにくいそうです。論理的にはすっきりしましたが、どちらのウイルスに感染するかは患者さんが選択することができませんので「机上の空論」なのかも知れません。
③はかなりの難問です。いくつかの可能性が考えられますが、どれも確固たる証拠はありません。可能性その1は、ウイルスが宿主細胞に感染する際に結合する「鍵穴」が微妙に異なっていて感染する・しないが決定していることです。白血球血液型(HLA)などを詳細に解析することで罹りやすいのか罹らないのかわかるのかもしれませんが、そんなことを調べて「自分がほかのみんなとは違う」と自覚するのもそれはそれで気が進みませんね。可能性その2は生活習慣です。当科は呼吸器内科であることもあり、シーズン中はスタッフみんながインフルエンザに罹らないように細心の注意を払っていますが、その対策の根幹に「まめな手洗い」があります。可能な限り流水で頻回の手洗いを毎日行う、たったそれだけのことで感染のリスクは大幅に下げることができます。なぜならば、インフルエンザ感染の成立には飛沫のみならず接触感染が重要でありドアノブやパソコンのキーボードを介する感染が予想以上に多いからです。
以上の3つの可能性から唯一対策が可能な③に関してお勧めの方法があります。それは、外来・病棟・検査室などの業務を行う部屋に自動水栓かペダルスイッチ式の手洗い場を設けることです。自動水栓は新築時に設置できますし、ペダルスイッチは後付けできます。手洗いの際に蛇口をひねることがなくなることで接触感染を防ぐことができますし、自動・ペダル化で手洗いの心のハードル(=めんどくさい…)が下がります。もしいずれも未設置であれば、速やかに導入いただくのがよろしいかと思います。手洗い後の乾燥に関しては、ハンドドライヤーは使わずにペーパータオルにすることがお勧めです。この件に関してはまた本ブログでまた触れたいと思います。

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