浮腫(むくみ)について
少子高齢化の「高齢化」に大きく貢献している部長です。
呼吸器内科のみなさんは、入院患者の所属科の決定にあたって循環器内科ともめたことはないでしょうか?内科主要科として重要なこれら二つの科は本来仲良くしていないといけないのかなぁと思っておりますが、患者さんに関してはなぜか「心拡大あるから心不全!」「心エコーでEFが正常だから肺炎!」と押し付け合いになるんですよね。それぞれの科の多忙さを反映した結果ともいえますが…
というわけで、今回は理学所見での「浮腫」についてです。みなさんが毎朝病棟の受け持ち患者さんを回診するときに、どのように浮腫を評価しておられますか?おそらくほとんどの先生方が、下腿脛骨部分を親指で圧迫して「へこみ」が生じるかどうかで評価しておられることと思います。ところが、この方法には2つの大きな問題があります。この問題に関しては(私が見聞きした限りでは)巷に溢れるありとあらゆる診療マニュアルの類にはほとんど触れられていませんでした。よって、ほぼほぼ全ての国内臨床医に把握されていない可能性があります。心してお読みください。
まずひとつめ、脛骨を母指で圧迫する診察は患者さん目線では「とても痛い」です。お風呂上りなどに、自分自身を普段の診察時の力加減で脛骨圧迫しますと想像以上に疼痛が生じます。入院患者さんの安静療養という観点からは、マニュアル記載では許されても現実世界では無視できない問題です。患者さんが痛がらないのはじっと我慢しておられる可能性がありますよ。
ふたつめは、母指での圧迫の方法です。浮腫という現象は細胞と組織液間の静水圧の上昇で起こるのはご存知ですよね。この水分移動は非常に緩徐に起こります。したがって、母指で脛骨を強くがしがしとひと押し0.5秒くらいで押してむくみはないね!と判断するのは正しくありません。正しいむくみの評価のためには、脛骨を母指そのものの重みのみで余計な力を加えずに優しく15~30秒間おさえて、次にそっと指を離してへこみがないか評価すべきなのです。この方法ですと非常に高感度で浮腫を確認できます。(ちなみに少し斜めの角度から眺めると陰影がついてへこみが良く見えますよ)
だまされたと思ってまずはやってみてください。痛くもないし、患者さんの評判もアップ?するかもしれませんね。