おとなの食物アレルギー
少しずつ春の気配を感じられる今日この頃になりました。
ところで、みなさんは「同愛記念病院のアレルギー呼吸器科のブログだから期待して訪問してみたのに、アレルギーに関する話題はないの?」と思っておられないでしょうか?
これは出し惜しみしているわけではなく、アレルギー・呼吸器・日常ネタをバランスよく投稿したいという意志のあらわれなのです。というわけで、今回は満を持してアレルギーのお話しです。
ここ数年、おとなの食物アレルギー患者さんが増えていると感じます。当科がアレルギーを標榜していることもあり、近隣の医院・クリニックからの紹介受診も多いです。一般には食物アレルギーは「こどもの病気」という認識があり、おとなの食物アレルギーに対応できる施設も少ないため、これらおとな食物アレルギー患者さんたちは診てくれる病院を探して彷徨う医療難民化していることが多いのです。そんな彼らの駆け込み寺である当科では、主に3つのポイントをおさえて対応しています。今回はそのお話しをしますね。
まずひとつめ、それは「患者さんの訴えを良く聞いてあげる」ことです。食物アレルギーを発症したことで困ったり不安になったりしているのに、その訴えを聞いてくれないと不満に思っておられる患者さんは多いです。その後のステップであるポイントその2へつなげるためにも、ここで良好な医師患者関係を構築しておくことはとても大事です。
ふたつめのポイントは、詳細な病歴問診です。症状発現に関与した可能性がある食材を突き止めるために、何を召し上がったかを十分に事情聴取します。そうすることで、患者さん目線では「ここならば私の疾患のことをきちんと考えてくれている」という心理が働いて医療者に対する信頼感が生まれてきます。
みっつめのポイントは、患者さんに「武器」を提供してあげることです。採血してRAST検査を行い原因が特定できても、その結果を患者さんに伝えるだけでは患者さんの顧客満足は充足されません。日常生活において、①原因食材を忌避不可能な状況(たとえば外食・友人宅訪問・パーティ出席など)の前に予防内服する抗アレルギー薬・②万一の症状発現時に頓服できる抗ヒスタミン薬・③(重症症状の既往がある際には)エピペン™をきちんと処方してあげてそれぞれのおくすりの使い方を説明してあげるまでが診療であると考えています。患者さんも疾患に対して丸腰でなく、戦う「武器」があるということで心の平安が得られます。
本日はほぼほぼ総論的に述べましたが、今後はときどき具体的な症例を紹介しながらこの疾患については触れてゆきたいと思っています。