同愛記念病院アレルギー呼吸器科のブログ

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「栄養補給」してますか?

忙しい日常診療の中で、みなさんはどのような食事をしておられますでしょうか?

朝はウ〇ーインゼリー・昼は菓子パン1個で外来・病棟管理と頑張り、夕食は出前でガッツリという先生方も多いのではないかと思います。そもそも世間一般には医師は美食家というイメージが独り歩きしておりますが、現実はそんなに甘くありません。終日外来の日などでは、お昼は菓子パンすら食べる時間がとれずに飲まず食わずになることもしょっちゅうです。つくづく美食をするには時間が必要であることを再認識させられます。ちなみに、夕食のドカ食いは御多分にもれず生活習慣病まっしぐらですので注意が必要ですよ。

 

さて、今回は日常診療に役立つ「栄養状態」のお話しです。基本的に慢性の呼吸器疾患患者さんの栄養状態は良くありません。なぜなら、せっかく食べたものを十分に消化するのには酸素が必要ですが、慢性呼吸不全で酸素化不良の患者さんは酸素不足のために十分に栄養を摂れないのです。COPDにしても間質性肺炎にしても末期の患者さんを脳裏にイメージしていただくと、丸々と血色良く太った姿は想像できないのではないかと思います。低栄養は患者さんの寿命を縮めるのはほぼほぼ確実であり、議論の余地はありません。みなさんはこのことに対して注意を払って患者さんのケアをしておられますでしょうか?

栄養状態の指標としてポピュラーなのは血清アルブミンコレステロールコリンエステラーゼ・尿酸などです。主治医として当然これらは確認しておられることと思います。もうひとつとても重要なのは、患者さんの理学所見、特に視診上のありさまです。理学所見上の低栄養は、しばしば血液検査よりも感度良く患者さんの低栄養状態を反映します。毎日朝に「調子はどうですか?」と病棟回診する目的の9割はこれに尽きるといっても過言ではありません。回診時にチェックする項目としては以下のようなものがあります。まずひとつめは、患者さんの顔面の両目の斜め上、こめかみ部分のへこみです。良好な栄養状態の患者さんですと、ここがふっくらしています。よく神経性食思不振症の患者さんの目がギョロっとしている図がありますが、あれはこの部位の脂肪組織が削げ落ちているためです。ここがへこんでいる場合はかなりの期間、十分な栄養補給ができていなかった可能性が高くなります。ふたつめは、両手親指と人差し指の間の軟部組織のふくらみの有無です。親指を人差し指にくっつけますと、その間にぷっくりとふくらみが出現します。低栄養の患者さんですとふくらみがありません。もしあなたが自分の指でやってみてふくらみが確認できないようであれば、毎日の食事を見直す必要があります(笑)。みっつめは、以前にこのブログ内で紹介した下腿浮腫ですね(=低アルブミン血症を反映します)。ここにいる先生方はもう浮腫の正しい評価法はバッチリですよね…(https://doaiallergy.hatenablog.com/entry/2019/02/15/001328)。

あたりまえのことですが、低栄養状態を放置したままではいつまでたっても患者さんは良くなりません。もしどうしても良くならない受け持ち患者さんがおられたら、もう一度栄養状態を評価してそちらに介入してみるのもいいかも知れませんよ。ついでにご自身の食生活も改善してしまいましょう!

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