同愛記念病院アレルギー呼吸器科のブログ

スタッフ4名+医局秘書1名+部長1名で日々楽しく頑張っています。 大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。 後期研修希望者や(現在ほかの病院に勤務されている先生の)期間限定の国内留学のお問い合わせも受け付けております。アレルギー呼吸器以外の御専門の先生でも歓迎いたします。ご興味のある方は allergy6700@yahoo.co.jp までご連絡ください。 <p>☞<a href="https://www.allergy-doai.jp/"target="_blank

全自動のススメ

文明の力というのはすごいもので、私たちの生活を一変させてしまいます。例えば100年前にはたらいに水を張って洗濯板でごしごしと洗濯していたのが、現在では全自動洗濯乾燥機に洗濯物を放り込んでスイッチひとつ押すだけで、洗濯と乾燥を全自動でやってくれます。先日買い替えた洗濯機は洗剤まで自動投入になっておりました…

 

人類の生活は新たに開発されるテクノロジーによってどんどん便利になります。特に「家事」といわれる領域ではその進化は顕著であり、前述のたらい洗濯・物干し乾燥→全自動洗濯乾燥機、扇風機/ストーブ→オートエアコン、かまど炊飯→炊飯・保温ジャー、五右衛門風呂→お湯張り保温機能つきオートバスへと変化を遂げています。電子レンジもある意味自動調理器ですし、最近は食材と調味料を放り込んでポチっとなするだけでしっかりした料理が出来上がる自動調理なべまで出てくる始末です。そのような中で、いまひとつ普及が遅れているものがふたつあります。ひとつは食器用洗剤/スポンジ→自動食器洗い乾燥機、そしてもうひとつはほうき/ちりとり→ロボット掃除機です。前者に関しては欧米では当たり前の家事用装備であり、私も留学中にその威力に感激したものでした。自動食器洗い乾燥機の日本での普及には手ごわいご飯粒が落としづらいというハードルがありましたが、酵素入り専用洗剤による克服で今では恐ろしく綺麗な洗い上がりになります。

さて、長い前振りのあとに今回のお話しです。アレルギー性疾患の代表である気管支喘息患者さんの多くが感作されているのがハウスダストとダニです。両者は住居内の吸入アレルゲン(アレルギーの原因物質)の代表的なものであり、いわゆる「ほこり」です。せっかく適切な薬物療法が施されても、これらアレルゲンを減らす対策を同時に行わないと喘息症状は良くなりません。いうまでもなくハウスダストとダニに対する対策で最も効果的なのは「毎日掃除機をかけること」です。なんだそんなことか…と早合点しているそこの先生、その考えは甘いですよ。あなたは、前回あなたのお部屋に掃除機をかけた日を覚えていますか?返す刀で「おまえはこれまでの一生に食べたパンの枚数を覚えているのか?」と反論されると、私も背後に何らかの霊的なものを出さないといけないような気がしてしまいますが…(笑)

患者さんに訊いてみても、週に2回掃除機をかけている人ですらごくわずかで前回掃除機をかけた日すら思い出せない方が多いです。また、毎日かけておられる方でも、本当に隅から隅までかけて確実にかけているかは自信がないようで、少なくとも「右隅のほこり除去よし!左隅のほこり除去よし!」と指さし確認をする方は皆無でしょう。つまり個人の努力(心掛け?)ではなかなかハウスダストとダニを撃退することは難しいのです。喘息患者さんの中には、普段は症状が不安定で苦しいけれども旅行に行くとラクになるという人がおられます。通常旅行に行くとホテルに泊まります。ホテルは原則毎日ハウスキーピングが掃除機をかけ、その後基本的には責任者が確認していますので客室内空気中のハウスダストとダニの濃度が段違いに低いです。このことからも「毎日掃除機」がポイントであることがわかります。さて、どのようにすれば毎日掃除機をかけられるでしょうか?賢明な読者のみなさんにはおわかりのように、ここで登場するのがロボット掃除機です。彼らは文句ひとつ言わずに毎日掃除機をかけてくれます。1週間に2日どころか7日!です。これはすごいことです。また、最近はよくプログラムされており、隅のほこりもきれいにとってくれます。つまり毎日の掃除機がけを機械化することで、いとも簡単にかつ効果的にハウスダストとダニの対策ができてしまうのです。ただ、患者さんとお話ししていると、ロボット掃除機の使用には理由なき抵抗感(そこまで自動化しては主婦として申し訳ない…など)がある方もおられるようですが、「全自動」洗濯乾燥機を日常的に使っているみなさんにとっては、「全自動」掃除機(=ロボット掃除機)を使わない理由は何もないですよね。私は白物家電メーカーとは何の関係もない立場ですが、ことアレルゲン対策としてのロボット掃除機の導入の有用性は声を大にして主張していきたいと考えています。掃除という労働による疲労とストレスから解放される点も、気管支喘息のコントロール改善に寄与しますしね。

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