KiHAC研究会(大阪市)レポート
普段のつれづれ草から少し離れて今回は、去る4/6~7に開催されました近畿北陸気道疾患研究会(略称:KiHAC)に参加してきましたので、その時のことを少々書きますね。
KiHACは名前の通り、近畿地方・北陸地方の大学の呼吸器内科有志により設立・運営されている長い歴史がある研究会です。2日構成で、初日はレクチャー・2日目は一般演題発表となります。毎回大変に勉強になる研究会で、ここ数年は毎年参加させていただいております。発表された内容をすべて網羅したいところですが、今後論文投稿予定のご演題などもありましたので当たり障りのない内容のみに絞って報告させていただきます。
北野病院呼吸器センターの丸毛先生のご講演:ぜんそく治療を成功させるためのデバイス選択
- ドライパウダーとpMDI(スプレー)では薬物動態に違いがある。
- 患者側の因子(吸入流速など)と吸入薬側の因子(粒子径)との相性がある。
- 交感神経β2受容体は末梢気道に多く分布→pMDIのほうが良く到達する。
- ホルモテロール(β2刺激薬)は効果が迅速でかつ高いが動悸の副作用が出やすい。
- ビランテロール(同)はβ2選択性が高いため動悸が出にくい。
- 動悸が出やすい患者さんにはビランテロールの配合薬が適している。
- 逆に動悸が出にくい(=β2受容体が鈍い?)患者さんには吸入回数を増加すると吸入ステロイドの量のみならずβ2刺激薬の量も比例して増えるホルモテロールの配合薬が適している。
β2刺激薬の副作用が出やすい患者さんと出にくい患者さんとでそれぞれにうまく対応する方法が大変実践的で、明日からの臨床に役立つ内容のご発表でありました。
大阪市立大学の阪本先生のご講演:耳鼻科で診る「咳」
- 後鼻漏の患者さんは下鼻甲介がくっついている。
- 抗アレルギー薬とステロイド点鼻薬が後鼻漏の治療の中心的薬剤である。
- 後鼻漏には意外にもGERD(胃食道逆流)合併が多い。
- 喉頭アレルギーの主症状は咳嗽と喉頭の異常感である。
- 抗アレルギー薬(ヒスタミンH1拮抗薬)が著効する。
- 吸入ステロイド薬無効の慢性咳嗽の際は後鼻漏を疑ってみてほしい。
これまた内科医としては大変役に立つ内容でありました。後鼻漏、自覚のない患者が多いことをご存知でした? 知識としては知っていても、外来でしつこく問診されている方は多くはないのではないでしょうか?他科の先生のお話には、新鮮な発見がありますね。前期研修医の皆様が少し羨ましいです。
- 咳反射はすべてが不随意なものではない(=随意的な咳嗽もある)。
- それにはどうやら大脳皮質が関与している。
- 精神安定剤が効く咳嗽の場合にそれを疑う。
- 市販薬のパ○ロンゴールドには意外にも有用な成分が含まれていてお勧め。
- 問診と画像診断で肺がんや結核などの「ヤバイ」疾患は必ず鑑別しておくべき。
- 患者さんへの心理的サポートが思わぬ効果をあげることがある。
これまた、目からウロコのご講演でした。心因性咳嗽と診断すると、患者さんはウンザリしたり治療意欲を失いがちではないですか?寄り添っての心理的サポートはとても大切ですね。
先生方みなさん、どうやら同じような悩みや葛藤を抱えながら日常臨床に臨んでおられるのだなぁと感銘を受けました。来年も是非参加したいと思います。