地中海の青い空
桜の便りももうすぐそこの今日この頃、みなさまいかがおすごしでしょうか?
この時期、どこの会社や学校でも卒業シーズンで人の異動があるものと思います。
かくいう当科も、この春より当科を卒業されて異動となる先生方がおられます。
いつものことなのに何度経験してもまだ慣れないのが、やはり気ごころ知れたスタッフとのお別れです。これまでも、当科で専門医を無事とられて目標に向かって進もうとされる先生、念願だった臨床研究が実を結んで論文をおみやげに次のステップに進まれる先生など、心から労をねぎらい祝福しつつも一抹の寂しさを感じてしまいます。日が長くなり花も咲いて明るいイメージであるはずの春が実はそんなシーズンなので、いつもながらそのギャップに戸惑うばかりです。
以前留学していた英国インペリアルカレッジ心臓肺研究所の私が所属していたラボに、イタリア人のマルコが留学してきました。マルコはイタリアのシシリー島出身のお医者さんでした。くまさんを思わせる巨体に人懐っこい性格の彼とはすぐに打ち解けて、毎日大変楽しい研究生活をすごすことができました。そんな彼が留学期間を終えてイタリアへと帰国する日がやってきました。ただただ寂しいと感じた私たちラボメンバーが「君との別れがとても悲しいよ」とマルコに告げたところ、彼から思いもよらぬ言葉が返ってきました。
「今回ぼくが君たちと別れるのはとても寂しいことかもしれないけど、ぼくがここにきて君たちと出会えたことは嬉しく楽しいと思わなかったかい?ぼくがここへ来る以前に誰かとの悲しい別れを超えてきたから、君たちとの素晴らしい出会いがあったんだ。人生はそうやってゆたかになってゆくんだよ。」
出会いがあるから別れがある、別れが次の出会いの喜びを生んでいることを彼は端的に示してくれました。と同時に、別れの時に誰もが感じる言いようのない寂しさ・悲しさを見事に受け入れて将来への希望につなげる彼の懐の深いメンタリティに感服しました。今日本へ帰国して、ほぼほぼ毎年春に出会いと別れを経験するたびに彼の残した言葉を思い出しています。
*同愛記念病院アレルギー呼吸器科では新規スタッフ(常勤医師および後期研修医)を募集中です。詳しくはリンク先のホームページをご覧ください。