同愛記念病院アレルギー呼吸器科のブログ

スタッフ4名+医局秘書1名+部長1名で日々楽しく頑張っています。 大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。 後期研修希望者や(現在ほかの病院に勤務されている先生の)期間限定の国内留学のお問い合わせも受け付けております。アレルギー呼吸器以外の御専門の先生でも歓迎いたします。ご興味のある方は allergy6700@yahoo.co.jp までご連絡ください。 <p>☞<a href="https://www.allergy-doai.jp/"target="_blank

毎日がドッジボール

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名古屋銘菓・ぴよりんと悪の?ぴよりん


みなさんは幼い頃に「ドッジボール」という球技を体験されたことがあるでしょうか?バレーボールくらいの大きさのボールを使って行う球技で、ノーバウンドでぶつけられると内野から外野に追い出されて外野から内野の人にボールを「こきつければ」(=福岡方言)再度内野に戻れるという競技です。私も幼かりし日には参加したり、させられたりした思い出があります。今にして思えば、いじめ量産兵器のような競技であった気がしますが…ここで告白させていただきますと、実は私はこの競技を得意としておりました。スクールカースト最下位で影が薄くかつ内野両側前方寄りにある「投げ手の死角」を熟知していた私は、たいがい最後まで生き残りその時だけクラスのヒーローでありました。英語の「ドッジ」には「避ける・除ける」という意味がありますが、今日はアレルギーにまつわるドッジボールなお話しです。

喘息の増悪(=発作)の原因に吸入アレルゲンが重要であることはみなさんご承知のことと思います。確かに初診の喘息患者さんにRAST検査を行いますと、大半の患者さんにおいてハウスダスト・ダニなどの室内アレルゲンが陽性になります。しかしながら、その結果をもとに「どのような対策を打って環境整備をすべきか(=アレルゲンからドッジするか)」という命題に対しては、意外に専門医の先生方であっても具体的に患者さんに指導するのは難しいと感じておられるようです。ここでは、喘息患者数の多さだけが取り柄の同愛記念病院アレルギー呼吸器科が、この命題に対してどのように相対しているのかをいつも通りに対価なしで披露しましょう。

そもそも患者さんひとりひとりのライフスタイルはさまざまであり、その違いがアレルゲン暴露のパターンに違い(個性?)をもたらしています。したがってまずは病歴をきちんと聴取して情報を得ることが必要になります。たとえば、朝から出社して深夜まで働くサラリーマンでは自宅でのハウスダスト暴露は相対的に少なくなります。よって自宅では、寝室と寝具の対策が中心になります。一方、終日在宅する主婦や高齢者では、居室全体でのハウスダストの対策が必要となります。自宅内のホコリには外出中にロボット掃除機を走らせるのが有効であることは、以前のブログにてお伝えした通りです。

doaiallergy.hatenablog.com

それ以外で必要かつ有効な対策は、「居室内のモノを減らす」ことです。居室内にモノが多いと、それらがホコリを引き付けてしまいます。転居時などにドンガラのもぬけの空部屋が全くホコリっぽくないのは、モノがないからです。一時期流行った「断捨離」などの方法を用いてできるだけモノを減らしたシンプルなインテリアにするだけで、居室内のハウスダストは大幅に減少します。また、普段の生活で行う清掃にも注意が必要です。ロボット掃除機の守備範囲外である机上などを掃除する際にはマスク着用が有効ですが、医療関係者ではない一般の人々は想像以上にそのことに無頓着であることが多いです。ハウスダストが飛散することがほぼ確実な普段のお掃除の際には、花粉症シーズンと同等の備えで臨むようしっかりと指導する必要があります。季節の変わり目で、シーズン初のエアコン稼働時にも注意が必要です。普段しっかりとメンテされているエアコンでも、シーズン初回駆動時には中から変な匂いとともに真菌の胞子などを含んだヤバイ風が出てくることがほとんどです。当科にも、初夏や初秋にこのようなキケンな風をまともに吸い込んでひどい発作になって駆け込む患者さんが後を絶ちません。稼働前には必ず(外出で不在時に)慣らし運転をしてエアコン内に良く風を通しておくことで、ある程度はリスクが回避できます。

わんこ・にゃんこなどのペットアレルギーがある患者さんの場合には、勿論最良の対策はペットを里子に出すことです。しかし、ほぼほぼ全ての患者さんたちは半べそをかきながら「そんなことはできません」と訴えられます。ペット飼育している患者さんにとっては、わんちゃんにゃんちゃんたちは我が子のようにかわいい存在です。したがって、彼らにとってかわいいわんこにゃんこを里子に出すなど以ての外なのです。こちらとしましても冷血動物ではありませんので、患者さんのおっしゃることは理解できます。そこで、①ベッドには入れない(=一緒に寝ない)、②寝室内に入れない、③まめにお風呂に入れる/トリミングをするように3段階のレベルに分けた対策を指導しています。米国では、にゃんこアレルギーでも飼える「低アレルギーにゃんこ」が流通しているようですが一匹40万円以上もするようです。ペット飼育もなかなかタイヘンな趣味といえるようです。

タバコの煙で、一発で発作を起こす患者さんも多くおられます。自身の過失ではないわけですので、その理不尽さは想像するに余りあります。ここでの指導は、まさにドッジボールのそれです。道を歩いていて前方から咥えタバコの人が来たら、すかさず道路を反対側に横断して煙を回避します。立ち止まってタバコをふかしている人に遭遇したら、すかさず風上へと移動して漂う副流煙を回避します。そんなふうに同愛記念アレルギー科で指導を受けた患者さんたちは、いつのまにか、私よりも「ドッジボール」の手練れになっているかも知れませんね・・・。